2021年のFPD市場展望 (2) 追記

Published December 16, 2020
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第35回 DSCC田村のFPD直球解説 (電子デバイス産業新聞)

11月30日初版→12月16日追記※下線部

液晶パネルの価格急騰で各社の収益改善が急速に進むFPD業界。図らずも新型コロナウイルスの感染拡大がパネル需要の増加を巻き起こし、復調への大きなきっかけを掴むことになった。果たして2021年もこの好況が持続するのか。12月3日から聴講可能な 2020 Display Market Outlook "Virtual" Conference を配信し、最新のトレンドをレポートする調査会社DSCCアジア代表の田村喜男氏に、FPD業界の現状や今後の展望を聞いた。

―TV用液晶パネルの価格上昇が止まりませんね。

田村) 2020年の騰落率において「高騰した製品No.1」と言われており、4~6月期に対して7~9月期は平均で20%、10~12月期は7~9月期比でさらに30% (4~6月期に対して55%) の値上がりになると予想している。過去に経験したことのない上げ幅だ。この背景には、現在の強い需要に加えて、過去3年で半値になるという下がりすぎの反動や、韓国メーカーが大型液晶パネルの生産を止めることで不足感が強まるかもしれないという心理的不安などが影響している。また半導体需要が好調で、ドライバーICの不足感が強まっていることも少なからず影響している。さらには日本電気硝子・滋賀高月工場の停電によるガラス窯の停止トラブルが、2021年1-3月期のTV用液晶パネルの価格動向に影響を与えるかもしれない。 ※関連ブログ Power Outage at NEG May Create Glass Shortage for Displays

―強い需要に伴い、韓国メーカーは一部で生産を延長していますね。

田村) Samsung Display (SDC) は2020年12月の生産停止予定を2021年3月まで延期する。さらなる延期要請もSamsungのTV部門から受けており、2021年12月まで延期する可能性が高まってきたようだ。だが、LG Displayを含めた2社の7世代以上の韓国生産能力は、2020年は19年比で25%減、SDCの韓国生産ライン停止後には同比で65%減となる見通しで、大型液晶から撤退していく方向性に変わりはない。一方で、こうした状況に対し、CEC Pandaを買収できなかった中国のTCL華星光電 (CSOT) は、新設予定の「T9」に月産9万枚の液晶2ラインを新設する検討を本格化し始めた。2023年から稼働させる計画があり、コロナ禍に伴う需要増が新たな設備投資計画を呼び込んでいる。

―FPD需要面積はどう見ていますか。

田村) 液晶と有機ELの合計で、2020年は19年比5.8%増、21年も同様に6.3%増と想定している。主要製品の出荷台数として、2020年はTVが前年比0.9%増、PCおよびタブレット (モニター含む) が同14.4%増になると予測している。新型コロナが流行し始めた当初は、誰もこうした活況を予想できなかったが、PCおよびタブレットは過去にない記録的な伸び率だ。2021年は若干の反動はあるものの、TVは2020年比で0.5%増、PCおよびタブレットは4%減にとどまるとみており、大きく減速しない。特に欧米の消費者が、従来は旅行などに充てていた資金をFPD搭載製品の購入に振り向けており、全カテゴリーで需要増加につながっている。ただし、こうした流れで2021年に突入するため、2021年は上期の需要が強く、下期に向けて次第に調整が強まる「上期偏重」の流れになるとみている。工場稼働率は年間を通じて高いが、4~6月期を境に需給が緩和・バランス化していくのではないか。

―2021年市場で注目すべきテーマは何ですか。

田村) 一つはMiniLEDバックライトの流行だ。すでに中国TCLが「6シリーズ」として240ブロック分割の4K QLED TVを発売した。55インチが650ドル、65インチが900ドル、75インチが1400ドルという低価格仕様で、「MiniLEDバックライトは高価」というイメージを一変させた。これにSamsungと大手中国TVメーカーが追随する見込みであることに加え、AppleがiPadに採用する。液晶が画質で有機ELに対抗する有力技術として、ハイエンド~ミドルハイクラスの製品まで幅広く採用が進むのではとみている。またMicroLEDの立ち上がりがどうなるかも注目している。コストや量産技術に解決すべき課題がまだ多いが、2021年も耳目を集めることは間違いない。

―有機ELに関してはいかがですか。

田村) スマートフォン用に関しては、リジッド有機ELの回復が見込める。これまで中国市場では、Huaweiがシェアを上げ、リジッド有機ELの採用が多かったOppo、Vivo、Xiaomiの「OVX」がシェアを奪われる展開だったが、2021年はOVX勢が逆襲に転じる。一方で、Huaweiが低価格ブランドHonorを売却する計画など、生き残りの可能性も出てきている。フレキシブル有機ELは、Appleの新モデル全面採用に加え、中国ブランドのハイエンド機種にも採用増加が見込まれるため、安定して増加する。こうした背景に伴い、その周辺技術として、有機ELパネルのフォルダブルやリフレッシュレート向上 (倍速駆動) の需要増加、またLTPOバックプレーンやアンダーパネルカメラ (UPC) 技術の本格採用といったトピックスも、以前に増して注目を集めると考えている。

DSCCでは、12月3日から無期限聴講可能な 2020 Display Market Outlook "Virtual" Conference を配信し、最新の注目トピックスをより詳しく解説している。

(本稿は、12月24日付「電子デバイス産業新聞」のDSCC連載記事を基にしています)

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Written by

Yoshio Tamura

tamura@displaysupplychain.com