スマホ用OLEDパネル⇔セットブランドのサプライチェーン分析

Published September 28, 2020
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DSCC田村喜男の視点

DSCCが四半期毎に発刊する Quarterly OLED Shipment Report では、OLEDパネルの出荷枚数と出荷額を、タイプ別 (リジッド/フレキシブル/フォルダブル/ローラブル)・パネルメーカー別・アプリケーション別・採用セットブランド/モデル別に詳細収録しており (Q1'16-Q4'20:四半期ベース)、さらには長期需要も予測分析している (2021-2025年:年ベース)。

先週完成した最新号「Q3'20版」によると、2020年のスマートフォン用OLEDパネル出荷枚数は、前年比4%減の4億4,800万枚の見込みとなった。スマホ用ディスプレイ全体が前年比14%減の見込みであり、同4%減のOLEDは、18%減のLCDより下げ幅は小さいことになる。またフレキシブルは51%増であるが、リジッドは34%減と、競合するLCDより不振である。

さて本稿では、この最新レポートからデータを抽出し、2020年のスマホ用OLEDパネル⇔セットブランドのサプライチェーン動向を解説したい。※参考情報として2019年のデータも並べてみた。

出典:DSCC Quarterly OLED Shipment Report

主要スマホブランド別に述べる。

Appleは、2020年の全モデルにOLEDを採用すると同時にLGDからの調達を増量、さらにBOEからの調達も試みている。BOEに関しては、2回目の承認を獲得したことにより9月末からの量産開始を試みているが、その状況は引き続き要確認である。2021年以降は、SDC、LGD、BOEによる3社の供給体制が確立することにより、2020年では74%を占めるSDCのシェアは、各社のパネル供給能力を考慮すると50-60%にまで低下するとDSCCは予測する。

Samsungは、2020年のOLED需要が前年比で25%減少している。このOLEDの減少は同ブランドのディスプレイ需要全体の16%減よりも大きく、(LCDと競合する) リジッドOLEDの不振を物語っている。一方サプライチェーンでは、これまでは内製のSamsung Displayのみからの調達であったが、2020年に入り中国China starやBOEとの交渉を開始し、2020年下期からわずかながらでも中国製フレキシブルOLEDが採用される可能性が出てきた。フレキシブルOLEDのラインナップの拡大、内製Samsung Displayに対してコストダウン要求を強めるためにも、2021年からは多少なりとも中国製フレキシブルOLEDを採用していく方向と見られる。

Huaweiは、米中貿易摩擦により、2020年のOLED調達は当初見込みより大きく減少するとのDSCCの見通しだ。現時点では、2021年以降もOLEDパネル調達は困難との状況である。2020年のSamsung Display供給の90%以上はリジッドOLEDであり、独占供給となっている。しかし2020年9月半ばから韓国製OLEDパネルの供給は停止しており、その影響もあって、2020年のフレキシブルOLEDにおけるBOEのシェアは70%弱を占め、以下LGD、Visionox、Samsung Displayの順となる。

上記3社以外のブランドカテゴリー「China/Others」では中国ブランドのシェアが高く、特にOppo、Vivo、XiaomiのTier1ブランドが2020年のOLED調達全体の67%を占める。2020年のSamsung Display供給の73%がリジッド、2020年フレキシブルOLED全体の36%を中国勢が占める。このカテゴリー向けフレキシブルOLEDは、China Star、Visionox、 Tianmaが2021年に増量してくる。BOEがHuawei向け需要減に対応して、2021年にはこのフレキシブルOLED市場に攻勢をかけてくるので、中国フレキシブルOLEDメーカーにとっても激戦区となってくる。

(9月28日 16:20版)

本記事の出典調査レポート
Quarterly OLED Shipment Report

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Written by

Yoshio Tamura

tamura@displaysupplychain.com