コロナウイルスのディスプレイ産業への影響

Published February 12, 2020
Logout

コロナウイルスのディスプレイ産業への影響は、中国における川上の生産ライン設置及び部材供給から川下の製品需要、そして世界の製品需要にまでわたる。

1. 新規生産ライン設置の遅延
一四半期程度か?(海外装置メーカーの技術者などが帰国中)

2. 新規生産ライン立上げの遅延の可能性(特にFlexible OLEDなどの先端ディスプレイ)
期間は不明(海外の装置メーカーなどが帰国中)

3. 部材供給減
偏光板、PCB、Driver IC、エッチング液など。偏光板などは、日本・韓国メーカーも大部分を中国生産しており、極めて中国生産比率が高い部材となっている。

4. 海外技術者の本国への帰国
特にFlexible OLEDなどの先端ディスプレイが影響を受けやすい。

5. ディスプレイ生産
BOE B17武漢工場が2月2日から生産停止、LGD LCD広州工場の2月の稼働率が部材不足で急減、などのうわさがある。CSOTやTianmaのOLED/LCD武漢工場は2月10日時点で生産稼働中との情報がある。部材供給不足は、これから本格化する可能性があり、中国内の各種生産ラインの一時生産停止や稼働率低下、の可能性は十分にありうる。

6. ディスプレイモジュール・製品生産
Apple iPhone関連のモジュール/製品生産や各種TV生産動向など、引き続き要注目。この種の生産減は、中国内のみではなく世界各国の需要減にも影響を与える。漁夫の利を得るブランドも出てくる可能性がある。

7. 中国内の各種製品需要減
経済活動の停滞により、消費活動が行われず、旧正月期間も含めて2020年で1-2か月分程度需要減の恐れがある。


パネル・メーカー動向

CSOT:
LTPS LCD T3ラインとFlexible OLED T4ラインは在庫もあり、それなりに稼働している模様。Samsung Galaxy側でも、まだ調達問題はおきてない模様。武漢が封鎖されたとしても、CSOTは製品を出荷出来る許可が得られると信じている。T4ラインでは2月にはモトローラのRazrとTCLのシリーズ10が量産の立ち上げ段階で、3月にはXiaomiのMi 10の量産を立ち上げる。これらの数量は少ないが、稼働率低下などの影響が今後出てくれば、2020年の販売計画に影響を与えるだろう。

Tianma:
CSOTより状況悪いとのことであるが、OLEDの生産ライン・需要規模が小さいため、生産停止あっても、大きな供給問題の噂は出てこない。武漢でのRigid OLEDの生産については、上海工場に振り替えが可能(上海工場ではAppleのタッチ・バーと他ブランドのウェアラブル製品を生産中)。フレキシブル製品は武漢だけで生産中である。

BOE:
武漢のLCDのB17ライン(G10.5)では1月に数Kシート投入したものの、量産立ち上げ計画は遅延気味。2月は10K以上の投入を計画していたが、2月2日より生産停止した模様(2月10日以降は要確認)。装置メーカーの技術者は本国に戻ったため、新規設備の立ち上げが遅れている。2月以降新規設備の搬入は3か月程度遅れるであろう。Q1’20-Q2’20に搬入予定であったライン稼働が3か月程度遅れ、B17ラインの2020年末の最大投入規模は月産60K程度にとどまる可能性が出てきた。

Visionox:
武漢の近郊にOLED工場はないので、ほぼ問題なし。Visionoxの技術者や他のスタッフ不足は深刻ではないが、台湾や韓国からの技術者が帰国した、との情報がある。そして、2月以降の部材不足を憂慮している。

EDO:
OLEDパネル在庫が豊富にあるので、問題なし。スタッフ不足で低稼働率だが、他社よりも深刻ではない。


部材・材料・技術者
部材・材料:
キーとなる部材・材料については各パネル・メーカーとも、春節前に十分な在庫を確保したと表明。しかし、DSCCの調査によると、偏光板やPCB、Driver ICなどが不足している模様。
LCD TVパネルラインより規模が小さいOLEDの生産では、部材不足は深刻ではないと思われる。

技術者:
生産ラインでの直接人員は交通制限のため戻ることが出来ない上、外国人技術者も戻ることが出来ないので、中国全体では稼働率が大きく低下する可能性がある。外国人技術者がいないと、特に武漢では、新規ラインの立ち上げや新製品開発・サンプル供給に影響が出るであろう。


需要・価格
需要:
中国の殆どの小売店が1/24から閉店しているので、多くのブランドが当面の販売計画を20%程度引き下げた。Huaweiのスマホの在庫レベルは、幸いにも高水準である。しかし、1か月以上の経済活動低迷を考慮すると、2020年上期の新モデルの需要は20%下がるかもしれない。そして、2020年の中国のスマートフォン需要は、前年比10%程度減少する可能性がある。

価格:
材料不足などによる生産量不足で、特にLCD TV用パネル価格は予想以上に上昇する可能性がある。短期的には、パネル価格上昇の恩恵を受けることになるが、需要の下振れを考慮すると、Q2’20での価格上昇継続は難しい、との見方もある。

本記事のデータを
より詳しくご入手されたいお客様は
お気軽にご連絡ください

ご案内手順

1) まずは「お問い合わせフォーム」経由のご連絡にて、ご紹介資料、国内販売価格、一部実データ付きサンプルをご返信します。2) その後、DSCCアジア代表・田村喜男アナリストによる「本レポートの強み~DSCC独自の分析手法とは」のご説明 (お電話またはWEB面談) の上、お客様のミッションやお悩みをお聞かせください。本レポートを主候補に、課題解決に向けた最適サービスをご提案させていただきます。 3) ご購入後も、掲載内容に関するご質問を国内お客様サポート窓口が承り、質疑応答ミーティングを通じた国内外アナリスト/コンサルタントとの積極的な交流をお手伝いします。

Image Description
Written by

Yoshio Tamura

tamura@displaysupplychain.com