Apple iPhone 13を発表~ハイエンドモデル採用のLTPO 120Hz駆動が今後のトレンドに

Published September 15, 2021
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田村喜男の視点

本日未明 (日本時間 9月15日) に発表されたAppleのiPhone 13シリーズについて、DSCCではディスプレイの観点から分析速報したい。

iPhone 13は12と同じ4つのモデル構成であるが、今回はLTPOと120Hzが導入された。LTPOはApple Watchに採用されてきた先端技術であり、低消費電力化、裏を返せば高輝度化を実現する。120Hzは従来の標準60Hzに対して倍速駆動となる。両方のディスプレイ技術は共に、高精細動画の使用頻度が高まる5G環境に最適の先端ディスプレイ技術となる。スマートフォン市場では共に2020年から立ち上がり始めてはいたが、iPhone 2021年モデルでの本格採用により、2022年以降は全世界的に浸透していく流れとなろう。

iPhone 13 モデル別仕様
※右クリックで鮮明表示されます

低消費電力化が可能なLTPOを採用したことにより、標準輝度が1,000 nitsまで上昇する。LTPO対応のフレキシブルOLED量産メーカーは、スマートフォン向けのSDCのみとApple Watch向けのLGD、JDIとなっている。

スマートフォン市場では、2020年から投入されているSamsung Galaxyの複数機種 (フォルダブル含む) を筆頭に、Oppo、OnePlus、Leica、Vivoが2021年に製品化、Googleも2021年10月にリリース予定だ。いずれもSDC製パネルである。LGDやBOEなど中国パネルメーカーも、スマートフォン向けLTPO対応のフレキシブルOLEDを量産化の計画がある。LGDはiPhone 2022年モデルで採用されそうだ。スマートフォン向けのLTPOパネルには、全て同時に120/144Hz駆動が搭載されている。

iPhone ディスプレイ LTPS 60Hz vs. LTPO 120 Hz パネルコスト比較
出典: DSCCアジア代表・田村喜男

LTPOは、Oxide工程があり、アレイ工程が増加するため、パネル1枚当たりの設備投資額と減価償却費、そして人件費が増加する。そして、60Hzから120Hzへの倍速駆動への対応で、ドライバーICなどの駆動回路系部品コストが増加する。パネルコスト総計としては、LTPS 60Hzに対してLTPO 120Hzが15-20%増加する。

その他、2021年秋モデルでは4モデル全てが、タッチパネルでオンセルタッチ (Touch on TFE)、ドライバーICでCOP (Chip on Plastic) を搭載することとなった。2020年秋モデルでは、上位の2モデルのみがSDC製パネルで、これら2つの技術を搭載していた。しかし2021年の秋モデルでは、LGD製パネルでも同技術に対応することにより、4モデル全てがTouch on TFE、Chip on Plastic対応となった。歩留まりさえ問題なければ、これら2つの技術の採用により、薄型化や低コスト化にも貢献することになる。

iPhoneディスプレイ 技術別出荷動向
出典: DSCCアジア代表・田村喜男

iPhoneの2021年ディスプレイ調達は、前年比+10%を上回りそうだ。2021年の同フレキシブルOLEDパネル出荷数量は、2020年秋モデル、2021年秋モデル共に4つが対象となるため、前年比56%増の1憶7,900万枚が見込まれる。2021年モデルのパネルサイズとしては、最小の5.4”が減少、6.1”/6.7”の構成比が高まる。5.4”の小型サイズ需要は、2020年モデルでは当初生産計画を大きく下回る結果となり、2021年モデルでは同サイズモデルの販売計画を引き下げることにしたようだ。そして、2022年モデルからは5.4”サイズの製品化はしないと言われている。

iPhoneディスプレイ モデル別出荷動向
出典: DSCCアジア代表・田村喜男
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Written by

Yoshio Tamura

tamura@displaysupplychain.com