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FOR IMMEDIATE RELEASE: 09/16/2025


製造技術が異なるG8有機EL
日本支社長 兼 グローバルVPアナリスト 田村喜男

Counterpoint Research FPD部門 (東京) -

第91回 Counterpoint Research 田村喜男のFPD直球解説 (電子デバイス産業新聞)

当社では、2020-27年のFPD設備投資額を758億ドルと予想している。このうち2025~27年の3年間では、G8.7のIT用有機ELとG6有機EL向けの投資が80%を占めるとみており、G8.7が圧倒的な牽引役となる。なかでもG8.7有機ELに関しては、パネル各社で製造技術やバックプレーン (BP) 技術に顕著な違いがみられる。

Samsung Display (SDC) は「A6」ラインでタンデム構造のハイブリッド型 (ガラスとTFEで封止) パネルを製造する。ファインメタルマスク (FMM) でRGBを塗り分けて発光層を形成するプロセスを採用。BPはオキサイドで、OCTA (オンセルタッチ) 機能を備える。このパネルはAppleのiPadやMacbookに搭載される「Apple仕様」として知られる。A6ラインの量産稼働は当初予定より少し遅れ、2026年前半か半ばからの量産開始になる見通し。月産能力は1万5千枚で総投資額は25億ドルが見込まれる。

BOEも成都の「B16」ラインを2026年内に量産稼働させる目標だが、27年前半にずれ込む可能性も考えられる。パネルの製造技術はSDCと同じFMM方式だが、唯一異なるのがBPにLTPOを採用する点だ。LTPOは電子移動度がオキサイドより優れているが、TFT基板の設備投資負担はオキサイドより大きくなるため、総投資額は30億ドルと見込まれる。BOEはB16でIT用ハイブリッドに加え、モバイル用のフレキシブル有機ELの製造も計画している。

Visionoxは、安徽省合肥市の新工場「V5」において、フォトリソ技術でRGB発光層を形成する独自の新プロセスを採用する。BPはLTPO、OCTA機能も備えるが、製造するパネルはフェーズ1がフレキシブルのみ。このフォトパターンド技術は、FMMプロセスに比べて露光装置を多用するのが特徴だが、トータルの装置コストはFMM方式を下回る。量産稼働は2027年末、総投資額は28億ドルが見込まれる。

CSOTは、広州市のT8工場でインクジェット印刷 (IJP) 方式を用いた量産を計画しており、2025年末-26年初頭に装置発注が見込まれている。IT用としてBPにオキサイド、次いでモバイル用としてBPにLTPSを採用したパネルを2028年初頭から立ち上げていく見通し。IJPは高精細化に課題があるが、装置コストは最も低い。総投資額は、IT用のオキサイドBPが月産1.6万枚で19億ドル、モバイル用LTPS-BPが同6500枚で6億ドルと見込まれる。

このように、同じG8ラインでも製造プロセスが異なる背景には「補助金」が関係している。中国パネルメーカーが国や地方自治体などから補助金を獲得するには新規性が必要で、そのために新規プロセスに挑戦する必要があるということだ。ちなみに、ジャパンディスプレイも独自のフォトパターンド技術の事業化を検討していた。また、LG DisplayはG8ラインの投資計画実行を具体化していないが、事業化する場合はSDCと同じapple仕様のパネルを量産する可能性が高い。


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