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FOR IMMEDIATE RELEASE: 04/11/2022


ロシアのウクライナ侵攻の影響
DSCC アジア代表・田村喜男

DSCC Japan (東京) -

第50回 DSCC田村のFPD直球解説 (電子デバイス産業新聞)

当社の提携調査会社であるDISCIENの分析によると、2022年の世界テレビ需要は460万台減少するとみられる。このうち360万台はロシアのウクライナ侵攻に伴うロシアとウクライナへの直接的影響、残り100万台は中東・アフリカを含む他地域への間接的影響によるものと推測している。

ロシアの人口は約1.46億人、ウクライナは約4400万人。OECD (経済協力開発機構) は、侵攻後1年間で世界全体の経済成長率 (実質GDP成長率) を1ポイント超押し下げ、物価上昇率を2.5ポイント近く押し上げると試算している。TV用パネルの年間需要を2.5億台とみると、360万台は1.4%に相当するため、現時点ではFPD業界もOECDの予測に近いマイナス影響を受けると考えるのが妥当だろう。ロシアの需要減少は、外資系企業の販売停止以上にルーブル安による影響が大きい。

欧米諸国がロシアに経済制裁を科し、主要企業がロシアでの事業を停止したことも影響する。例えば、アップルのiPhoneはロシア市場でシェア25%を持つとされるが、ロシアでの販売停止により、OECD予測を当てはめると年間200~300万台のiPhone用パネル需要が減少する可能性がある。

ロシア市場で高いシェアを持つのが韓国企業だ。DISCINEによると、TV市場ではサムスンが27%でトップシェア、2位が19%のLG。サムスンはスマホ市場でもシェア首位だ。しかし、両社ともすでにロシアに対する出荷をすべて停止しており、マイナスの影響を免れない。

こうした状況下で漁夫の利を得やすいと考えられるのが中国だ。経済制裁に加わらず、協力関係を維持し続けているためで、欧米や韓国の企業が失うであろう市場を中国企業が今後埋める可能性がある。

一方、FPDの製造に不可欠な部材にも影響が出始めている。なかでも露光に必要なネオン、エッチングに必要なキセノンやクリプトンといったレアガスや、ニッケルをはじめとするレアメタルはロシア/ウクライナからの調達が困難になり、価格が急騰している。現時点では生産に支障は出ておらず、数カ月なら在庫で対応できるようだが、解決に長期間を要すれば深刻の度が増しそうだ。

DISCIENは2023年に回復を見込んでいるが、侵攻の犠牲と結果は不明であり、23年の予測についてはさらに慎重な検討が求められる。経済制裁などでルーブル安が今後も継続すれば、紛争が終息してもロシアでは物価高騰が継続し、市況がさらに悪化するかもしれない。

いずれにせよ、FPD業界にとって今回の侵攻は、需要を下ぶれさせ、価格下落を長引かせて反転を遅らせる。当初は7~9月期中にパネル需要が復調し、液晶価格が持ち直してくると期待されていたが、この流れを押し戻すネガティブ要因にしかならない。




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